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居住者と非居住者

1 納税義務者となる個人

所得税法では、所得税の納税義務者を居住者、非居住者、内国法人、外国法人の四つのグループに分けてそれぞれ納税義務を定めています。
なお、法人でない社団や財団で代表者や管理人が決められているものは、法人と同じように取り扱われます。

2 居住者とは

居住者とは、日本国内に住所があるか又は現在まで引き続いて1年以上居所がある個人です。なお、居住者は、「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分かれます。

① 非永住者以外の居住者

非永住者以外の居住者は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。一般的にはほとんどこのケースに該当します。

② 非永住者

居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である個人を非永住者といいます。非永住者は、国内において生じた所得(国内源泉所得)と、これ以外の所得(国外源泉所得)で日本国内において支払われたもの又は日本国内に送金されたものに対して課税されます。
(注) 平成18年3月31日以前においては、居住者のうち日本に永住する意思がなく、かつ現在まで引き続いて5年以下の期間、日本国内に住所又は居所を有している個人を非永住者と判定します

③ 住所と居所

イ 国内法による取扱い
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。
(注) 滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。

外国(A国)の居住者となるかどうかは、A国の法令によって決まることになります。A国で居住者と判定され、わが国でも居住者と判定される場合、租税条約では、二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めています。どちらの国の居住者となるかを判定するに当たっては、わが国とA国との租税条約によりますが、国籍をひとつの判断要素としている条約もあります(日米租税条約等)。なお、必要に応じ、両国当局による相互協議が行われることもあります。
「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
法人については、本店所在地主義により、内国法人又は外国法人の判定が行われます。
 

ロ 租税条約による取扱い
租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を防止するため、個人、法人を含めた居住者の判定方法を定めています。具体的には、それぞれの租税条約によらなければなりませんが、一般的には、次の順序で居住者かどうかを判定します。
個人については、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。
法人については、相手国が管理支配地主義を採用している場合には、本店所在地主義と競合することになり、双方居住者の問題が生じますが、その場合には、その法人を実質的に管理する場所のある国の「居住者」とみなすことになります。

3 非居住者とは

居住者以外の個人を非居住者といいます。非居住者は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されます。
 (2) 国内源泉所得の範囲
 「国内源泉所得」には次のようなものがあります。
  ① 国内において行う事業又は国内にある資産の保有・運用若しくは譲渡により生ずる所得
  ② 国内において民法に規定する組合契約等に基づいて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの
  ③ 国内の土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の附属設備又は構築物の譲渡による対価
  ④ 国内で人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価
例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者又は科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がそれに当たります。
  ⑤ 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価
  ⑥ 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、平成20年5月1日以後外国法人が発行する債券の利子のうち一定のもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等
  ⑦ 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等
  ⑧ 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの
  ⑨ 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、又はその譲渡の対価、著作権の使用料又はその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの
  ⑩ 非居住者に対する国内での勤務に対する給料等、賞与、退職手当、人的役務の提供に対する報酬や公的年金等
  ⑪ 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品
  ⑫ 国内にある営業所等を通じて締結した年金保険契約に基づく年金等
  ⑬ 国内にある営業所が受け入れた定期預金の給付補てん金等
  ⑭ 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配

   これらについての課税方法は、国内源泉所得の種類や恒久的施設の有無によって異なります。なお、租税条約によって国内源泉所得について異なる定めがある場合は、租税条約に従うことになります。また、①以外は源泉徴収の対象となります。

 4 非居住者に対する課税のしくみ

「国内源泉所得」を有する「非居住者等」が国内に支店や事業所などの「恒久的施設」を有するか否か、どのような「国内源泉所得」を有するかにより、課税方法が異なります。所得税法においては、その納付すべき税額の課税方式として、申告納税方式と源泉徴収方式が採用されており、非居住者についてはその人が国内に恒久的施設を有する場合には、居住者と同様に(一定の所得は源泉徴収の上)申告納税方式を原則としていますが、その他の場合には、原則として源泉徴収のみで課税関係が完結する源泉分離課税方式が基本となっています。

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